ほしい資産価格変動の一般物価への影響分析
評者 上智大学経済学部准教授 中里 透
異次元緩和がスタートして5年が経過した。消費者物価の上昇率(対前年同月比)は2014年の春に1%台半ばに達したものの、消費増税後の景気の減速と原油価格下落の影響などによってその後は上昇のペースが大幅に鈍化し、足元では上昇率が0%台後半にとどまっている。
このように2%の物価安定目標の達成は見通しにくい状況にあるが、こうした中で金融政策の運営を考えるにあたっては、物価が思うように上がらないのはなぜなのかということを改めて点検することが必要であろう。本書はこの作業を行ううえで有力な手がかりを与えてくれる。
著者によれば、1990年代以降の日本経済は「マイルドなデフレ」によって特徴づけられる。そして、この背景には長期にわたる供給超過=需要不足の継続という現象がある。バブル崩壊と97〜98年の金融危機、グローバル化の進展、人口減少社会への移行といった累次のショックが、経済の供給面における構造調整の遅れと慢性的な需要不足を惹き起こし、物価の弱い動きをもたらしたと著者は言う。
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