驚嘆と感嘆に満ちた格差社会論の決定版
評者 慶応義塾大学環境情報学部教授 渡辺 靖
日本では10年おきに大規模な学術社会調査が行われている。調査技法の精度やデータの信頼度は折り紙つき。著者は2015年に実施された最新の調査の中心人物で、計量社会意識論や学歴社会論におけるわが国のエース的存在である。
今回の調査の最大の特徴は若年層に関するサンプル数が充実している点だ。鮮度抜群の素材を名シェフがどう料理するのか。大いに期待しながら本書をひもといた。
巻頭の「はじめに」こそやや取っ付きにくかったが、それ以降は驚嘆と感嘆の連続。格差社会論の決定版が出たと直ちに確信した。
現在、日本では大卒と非大卒の比率がほぼ半々。そこに生年世代と男女のジェンダーを重ね合わせることで、著者は現代の格差現象の根幹を浮き彫りにする。ふんだんに紹介されるグラフや数字の一つひとつがどれも興味深い。
とりわけ注目すべきは「非大卒の若者」。いわゆる「若者の政治離れ」はこの層に限った現象とのこと。「若者のアルコール離れ・タバコ離れ」もこの層の男性にはまったく当てはまらないという。
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