英国でも課題になる 権力集中の弊害の除去
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
首相権限の強い英国流の二大政党制を目指し、小選挙区制の導入など政治改革に日本が舵を切ったのは1994年だった。その後も首相権限を強化すべく、様々な行政改革を行い、近年は内閣人事局の設置で、省庁統制を強化した。この結果、あらゆる決定が首相主導で進むようになったが、十分な成果は得られているか。
本書は、我々がモデルとした英国の議院内閣制の問題点を専門家が分析し、日本への含意を論じたものだ。近年、英国では議院内閣制が上手く機能するための条件が崩れ、権力集中による弊害の除去が課題となっている。我々は誤った幻想を抱いていたようだ。
二大政党制下での議院内閣制は、議会の多数派が政府を構成するため、立法と行政が融合し、強い権力を生み出す。民意を離れた首相の暴走や少数派の権利侵害を避け、権力をコントロールするには、政党間競争とリーダーの自己抑制が不可欠だ。
しかし、英国も他国と同様、二大政党制が空洞化し、70年代以降、絶対得票率は二党を合わせて50%台に低下、近年は過半を割り込むことも多い。野党に転落すると停滞が続き、政権交代の可能性の大幅低下で、政権への規律付けが失われる。政権中枢が自己抑制を失うと、政権運営は民意からかけ離れ、国民からの信頼は低下という悪循環に陥る。
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