政権選択を実質的に封じる解散権行使
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
かつての55年体制。自民党政権は派閥の連合体で、首相は解散権や閣僚人事権も思い通りに行使できず、派閥領袖のコンセンサスに沿って政権を運営していた。政策決定も内閣をバイパスし、各省庁と与党議員が練り上げ、党総務会の全会一致による合意を経たものが閣議で決定され、国会に提出されていた。憲法が描く議院内閣制とは異なる統治体制だったのである。
1990年代以降、首相権限の強い英国流の2大政党制を目指し、大きく舵が切られる。本書は、与党官僚内閣制によるコンセンサス型民主主義から多数決型民主主義への移行過程を平成デモクラシーとして論じたものだ。過去30年の日本政治が政局を巡る離合集散だけではなかったことを浮き彫りにした好著である。
変化の起爆剤は小選挙区制導入である。リクルート事件で失墜した政治への信頼回復や竹下派の跡目争いで政争の具とされたが、その導入で派閥は衰退、公認権と政党助成金の配分を握る党執行部に権力が移行する。党首選びも国会議員自らの当選につながる選挙の顔の選択となり、選挙公約も候補者個人の利益誘導の約束から、党首主導のマニフェストに変化する。選挙の顔として誕生した橋本龍太郎首相が打ち出した行財政改革は首相主導を加速させる。
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