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『明治の光 内村鑑三』 『3つのゼロの世界』ほか

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明治の光 内村鑑三
明治の光 内村鑑三(新保祐司 著/藤原書店/3600円+税/382ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
しんぽ・ゆうじ●文芸批評家、都留文科大学教授。1953年生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。著書に『内村鑑三』『文藝評論』『批評の測鉛』『日本思想史骨』『正統の垂直線──透谷・鑑三・近代』『批評の時』『国のさゝやき』『フリードリヒ』『異形の明治』『「海道東征」への道』など。

現代日本の精神構造を形作る

評者 福山大学経済学部教授 中沢孝夫

過日、立教大学総長の吉岡知哉教授の最終講義で「思想と教育は啓蒙を伴う」、また「自分が真理を手にした、と思う人々の集団は社会活動をする」という言葉と出会った。深く同感した。むろん「迷惑」としかいえない思想・集団と「活動」がほとんどであるが。

しかし、内村鑑三から始まった独特のキリスト教信徒の集団である日本の無教会は、内村から直接影響を受けた、矢内原忠雄、塚本虎二、黒崎幸吉といった人々の聖書研究会が散会したあとは、他者への啓蒙も社会活動の広がりもなく、徐々に衰退しているかのようにみえる。

だが、あらためて本書を読んで、目に見える「教会」(建造物)はないが、内村鑑三が、直接・間接に接した人々に与えた影響の広さと深さは、まぎれもなく現代日本の精神構造を形作っていると思わざるを得ない。それは日本のリベラリズムの核心をさえ形成している。

いちいち氏名を記さないが、内村による東京・柏木の聖書研究会のメンバーとその周辺の人々。また、いわゆる教育勅語と御真影に敬礼しなかった「不敬事件」による内村の不遇時代にかかわった人々など、本書に登場する人物の多彩さにほとんど目眩(めまい)すら覚えるほどだ。

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