東芝が分社化で生き残りを図ろうとしている半導体ビジネスは今、業界全体で大きな地殻変動が起きている。巨額の企業買収が相次いで起こり、「札束合戦」の様相を呈しているのだ。
それを象徴するのが、2016年7月に発表されたソフトバンクグループによる半導体チップ設計会社・英ARMの買収だ。約3.3兆円の買収金額はJTの英ギャラハー買収を抜き、日本経済史上の最高記録となった。同10月には通信用半導体最大手の米クアルコムが蘭NXPを約5兆円で買収すると発表、NXP自体も15年に米フリースケールを約2兆円で買収しているなど、とにかくケタ違いの買収が繰り広げられている。
IoTが市場を牽引
巨額の資金が動いているのは、半導体業界が今後の成長産業だからにほかならない。最も注目されている分野が、IoT(モノのインターネット)だ。
家電や工作機器などのモノを通じて生体データや画像データなどを収集できるIoTには、特にソフトバンクグループの孫正義社長が期待を寄せている。ARM買収の発表後に孫社長は「(IoT時代の到来で)今から20年以内におそらくARMは約1兆個のチップを世の中にバラまくことになる」と意気込みを語った。実際、20年にはインターネットに接続できるモノの数が、15年の約150億台から約300億台へと倍増すると推計されている。
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