自分が住まない実家を、いつまでも空き家のままで放置しておくのは何とももったいない。かといって実家を売却したり賃貸に出したりするのも、一筋縄ではいかない。そこにはどんな苦労があるのか。4人の実例を紹介する。
[Case1]前田英行さん(60代・男性)
持っているだけでカネがかかる 地元への郷愁で売却に抵抗感
妻の実家を12年間かけて一緒に片付け。複雑な権利問題を役所に掛け合い解決したうえで売却
神奈川県に住む前田英行さん(仮名)が、妻の実家をようやく売却したのは2013年。妻が親の死去に伴って01年に相続してから、実に12年の月日が流れていた。
処分には相応の費用がかかった。毎年の固定資産税や、基本契約を残していた水道光熱費だけではない。妻の実家は大阪府枚方市にあり、夫婦二人で出向くだけで、1回当たり数万円の交通費がかかる。
庭の草木も伸び放題で放置できない。手入れを業者に依頼しなければならず、その費用も1回数万円は必要だった。結局、何だかんだとかかった費用を計算してみると約400万円に上った。
妻の実家は小高い丘の上にある。「貸せるような場所じゃない。持っているだけでおカネがかかるから、早く売ろう」。相続当初から英行さんはそう言っていたが、「古くからの友人や親類は関西にいる。つながりが薄れる」。妻は逡巡した。英行さん自身も相続当初は50代。海外駐在や地方への単身赴任などもあり、妻の実家の片付けや売却になかなか手をつけられないまま時間だけが過ぎていった。
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