10月初めまで、政治は安倍晋三首相の思いのままに動いているように見えた。自民党の総裁任期延長が既定路線となり、安倍首相は2020年の東京オリンピックを首相として迎える構えである。アベノミクスが成果を上げているわけではないが、働き方改革だの女性の活躍だのと新しいスローガンを打ち出し、野党のお株を奪って新しい政策課題に取り組んでいるように国民には見せている。
政府は安保法制に基づき南スーダンのPKOに自衛隊を派遣し、いよいよ日本も海外で武器を使って「国際貢献」する国になれる。かの地で起こっているのは戦闘ではなく衝突であり、自衛隊派遣は可能だと首相は言い張る。不幸にして犠牲者が出ても、そのショックを自衛隊員への感謝、さらには政府への支持に転轍しようという意図があるのかもしれない。首相は通常国会冒頭の所信表明演説で自衛隊への感謝を呼びかけ、与党議員がスタンディングオベーションで応えるという気味の悪い演出まで行った。これも、戦後初の英霊(戦死者)を国が作り出すことへの準備だと見れば、合点がいく。
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