求める経営は固有の解による企業価値の向上
評者 ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパン会長 高橋 誠
日本には長期投資家が少ないといわれるが、企業は自社の株式を長期に保有してもらうべく種々の工夫をこらしている。保有期間の違いによる株主優待制度や、トヨタ自動車が発行した「AA型種類株式」などがそうした端的な例だ。同時に日本版スチュワードシップ・コード(「責任ある機関投資家」の諸原則)の設定によって、経営者と投資家の建設的対話が重要視され、それを具現化するための「エンゲージメント投資」なども脚光を浴びている。
著者は20年弱にわたって従事してきた経営コンサルタントの経験を生かして、エンゲージメントファンドを立ち上げ、自ら「働く株主」として、その投資原則に基づき資産を順調に拡大してきた業界の風雲児だ。
本書で、そもそもなぜ日本には長期の投資家が少ないのかを説明した後で、自分たち長期投資家は長期調査家でもあると自己診断する。徹底的に対象企業を分析し、「みさきの公理」、つまり「事業×組織人材の経営手腕によるべき乗」 に従って選別し、最後はその経営者と長期的に付き合っていきたいかの判断になるという。その結果、10社程度の集中投資先を選ぶ。ここでのキーワードは経営手腕のべき乗。場合によっては指数関数的に効き、その手腕の改善に、建設的対話を通して全力を尽くすことになる。このことが付加価値を生みファンドのリターンの源泉になるというのである。
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