インタビューを手がかりに、豊田社長の経営論を5つの視点でさらに詳しく読み解く。
[キーワード1]共感共鳴
章男流の最大の特徴は数値ではなく思いを語ることにある。
「トヨタみたいな会社で私がわかりやすい数値目標を言うと、ワンイシューでそちらにピンと動く」
トヨタ自動車は数値目標を掲げ、その達成を目指すことで成長を果たしてきた会社だ。
だが数値目標だけを追いすぎたことが、後に危機を招いたという強烈な反省がある。豊田家の御曹司である自分が数値を語れば、その達成を至上命令としてトヨタという組織は走り出す。
もちろん、言葉にしないからといって数値を軽視しているわけではない。
「トヨタは規模に対して興味がないというのはうそ。私以外の本部長は、しっかりと明確な目標を立てて非常に戦っている」
ではなぜ思いを語るのか。
「もっといいクルマづくり」「いつまでも愛車と言っていただけるように」「バッターボックスに立つ」「やりましょうよ」
わかりやすい数値目標に比べて、具体的に何をすべきかわからない。つまり、答えを与えない。それこそが狙いだ。もっといい車とは何か、愛される車とは何か、やりましょうとは何をやるのか──受け取った側が考えないといけない。
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