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僕は章男さんのファンだった 泰江孝男 東亜パッキング工業 社長

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入社直後の先輩に直撃

トヨタ自動車の野球部を引退してから仕事を始めて2年目、僕が34歳のときに(豊田)章男さんが入社してきた。僕は元町工場の工務部日程課の計画係で、章男さんは部品係だった。当時の座席は学校の教室のように全員前向きの並び方で、僕の真後ろで章男さんが働いていた。 

周りの目を気にして章男さんとはかかわってはいけない雰囲気があった。現場では章男さんは僕の右横を必ず通る。話をしたらいかんと思っていた。章男さんが入ってくるとそれまで雑談をしていた人も話すのをやめた。

その一方で章男さんは、誰に対しても分け隔てのない接し方を心得ていた。たまたま僕と彼の立ち話を見た人は「泰江は章男さんと特別に親しい」と勘違いしてしまう。目上の人は敬い、目下の人はいたわる。そんな雰囲気が出ていた。どんな場面でもそつのない振る舞いができるのが彼の魅力で、30歳を待たずしてそれができていた。

「こいつが社長の息子じゃなかったら遊んでいるのにな」と僕も元町工場の平社員もみんな思っていた。

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