最大の貢献は金融政策への透明性の持ち込み
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
サブプライムバブル崩壊で米国発の金融危機が始まった時、不幸中の幸いというべきか、FRB議長は大恐慌の研究で世界的に知られたバーナンキ氏だった。
大恐慌再来を回避するため、著者はどう対応したのか。
すでに二人の財務長官、ポールソン氏、ガイトナー氏は回顧録を公表済みだが、本書の特徴は学者として冷静な視点で当時の政策を説明していることだ。
政治家や経済学者からもFRBへの批判が少なくなかったが、必要な金融政策は法律が許す限りすべて実行したと主張する。
19世紀末に中央銀行の最後の貸し手論を唱えたバジョット氏は危機の際、存続可能な金融機関にはペナルティ金利で無制限に資金を供給せよと説いた。
大恐慌の教訓は、FRBが十分な資金を供給せず危機が拡散したことだった。
今回金融市場で取り付けが広がると、著者は教訓通り大量の資金供給を行った。
リーマン破綻については意図したものではなく、AIGと異なって債務超過に陥っていたためFRBも資金を出せず、民間の買収以外に救済方法がなかったと告白する。
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