農業は保護すべきか、あるいは自由貿易を貫くべきか。
TPP交渉のさなか、日本でも戦わされたこの論争、実は現在に至るまで続く経済学説の2大潮流を生み出す契機の一つにもなったものだ。
今からちょうど200年前、英国で改正穀物法(1815年法)が制定された。
改正穀物法の内容は、国内小麦価格が1クオーター当たり80シリング以下のときは穀物輸入を禁止するというもの。フランスやウクライナ、黒海沿岸などからの安い小麦が英国に入らないようにする措置で、現在の日本のコメ高関税と似ている。
この穀物法を支持した最大の勢力は地主階級(貴族)だった。輸入禁止で穀物価格が上昇すれば、小作人の賃金や農業利潤を控除した後の地代は拡大することになる。このため穀物法は「地主独占法」とも呼ばれた。
片や穀物法を批判した急先鋒は産業革命以後新しい国富の担い手となった工業資本家である。彼らからすれば穀物価格上昇は雇用者の生活費となる賃金の上昇にもつながり、資本家の利益が低下する。さらに外国穀物の輸入禁止は、これと交換に輸出されるはずだった英国製工業製品の生産を阻害する要因となる。
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