巨額買収を支えた潤沢なキャッシュが足りなくなる。借入金というレバレッジを生かしたソフトバンクグループの得意技が、国内通信事業の失速懸念により、アキレス腱となるかもしれない。
有利子負債は2014年度末時点で12兆円に迫る(図表1)。営業利益の実に約7割を占める国内通信事業は、約1兆円の営業キャッシュフローを生み出す資金源だ。だがここ数年、海外企業買収などによる投資額は単年度の営業キャッシュフローを大きく上回る。米通信大手スプリントを買収した13年度は3兆円近い現金が流出した(図表2)。これを補うために、ソフトバンクは巨額の社債を発行している(図表3)。
「孫正義社長は新株発行をしない方針。新株を発行すると既存株主の保有している企業価値が希薄化される。だから株式市場ではなく、債券市場から調達している」。財務部長の後藤芳光常務は巨額の社債を発行した理由についてそう解説する。
成長に向けた資金を借金で賄うことで、ソフトバンクはこれまで投資効率を高めてきた。14年度のROE(自己資本利益率)は28%。2ケタで一人前といわれる中、驚異的だ。ただし、これは主力の国内通信事業が盤石だからできた芸当だ。新株ではなく借金で成長資金を賄い、少ない株主資本で多くのリターン(利益)を得ようとするお得意のレバレッジ経営が、今後も功を奏するとは限らない。金融機関が抱く マイカルのトラウマ 借りたカネはいつか返さなければならない。特に18年度と20年度には約1.5兆~2兆円と巨額の償還を控える(図表4)。後藤常務は「ロールオーバー(借り換え)をすればいい」と余裕の表情だ。3兆円強の現金をストックし、中国アリババ株など約9兆円の上場有価証券を単体で持つソフトバンクは、返済の原資がなくなる心配をしなくていい。
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