欧州の最強国ドイツを2つの危機が襲う。メルケルは「最大の危機」をどう乗り切るのか。
東西統一から25年目を迎える今年、ドイツはこれまでに経験したことのない二つの危機に直撃された。一つは、欧州最大の自動車メーカーでドイツ最大手企業の一つ、フォルクスワーゲン(VW)グループの大規模な不正。もう一つは中東の動乱に端を発する、多数の難民の流入である。
特に難民危機は、これまで順風満帆だった「欧州の帝王」アンゲラ・メルケル首相の支持層を初めて大きく切り崩した。欧州で最大の影響力を持つ政治家・メルケルに「神々の黄昏(たそ がれ)」が訪れ、ドイツと欧州連合(EU)の政治地図が、音を立てて変わろうとしている。
二つの危機に共通するのは、VWとメルケルという、長年にわたり多くの市民から支持されてきた「ドイツのヒーロー」に対する信頼感が傷つけられた点だ。
ドイツブランドに差す暗い影
「まさかVWがこのような不正をしているとは思わなかった」。どのドイツ人と話しても、異口同音にそう答える。9月18日に米国の環境保護局がVWの排ガス不正を暴露してから1カ月以上経ったが、多くのドイツ人は欧州の産業史に例のない不祥事に今も茫然としている。
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