ドイツ中央部に位置する人口12万人の街、ヴォルフスブルク市。街の中心部をゆったりと流れる幅60メートルほどの運河を、貨物船が悠々と行き交う。一見何の変哲もないドイツの一地方都市にすぎないが、9月に発覚した世界的なスキャンダルが、こののどかな街の様相を一変させた。
総台数1100万台に上る前代未聞のスキャンダル。世界ナンバー2の大手自動車メーカー、フォルクスワーゲン(VW)による排ガス不正問題だ。
「VWがなかったら、ここは何もない街なんだ」 市内に住むヘンリキ・フォン・ルコヴィクツはため息をつく。
ドイツの首都ベルリンから高速列車で1時間ほど揺られると、四つの煙突がそびえ立つ独特の風貌の建物が姿を現す。VWにとって最大の、ヴォルフスブルク本社工場だ。主力車種「ゴルフ」や「トゥーラン」など、年間83万台(2014年の実績)を生産している。この本社兼工場で働く人は7.2万人。市外からの通勤者を含めると、市の人口の半分以上がこの工場で働いている。
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