「10万台多く(トヨタ自動車より)売るかどうかが問題ではない。本当の問題は質を伴った成長だ」 米国で、フォルクスワーゲン(VW)による排ガス不正事件が発覚してから1カ月余り経った10月28日の昼下がり。VWの新社長、マティアス・ミュラーは、ドイツ本社で2015年7~9月期の決算会見に臨んでいた。
この日発表した同社の業績は事前予想どおり、17.3億ユーロ(約2300億円)の最終赤字に沈んだ。排ガス不正に絡むリコールのための引当金など、約67億ユーロ(約8900億円)を計上したせいだ。VWが四半期で赤字に転落するのは実に15年以上ぶりだという。
事件発覚後、株価は4割近く下落し、今も100ユーロ付近をうろつく。VWは最終的に10兆円規模の負担を迫られるという試算もある。世界ナンバー2の自動車メーカーの経営が揺らぐことはないのか、マーケットは気をもむ。
会見でミュラーは「トップダウン経営を脱する」「私は現場に干渉しない」と繰り返した。排ガス不正を生んだ遠因には、前社長のマルティン・ヴィンターコルンらによる過度の拡大主義や上意下達の企業文化があったとされている。「脱トップダウン経営」のせりふを繰り返すミュラーの心中には、過去の経営との決別を期する思いがあるのだろうか。
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