「ご心配をおかけしております原子力事業について、若干触れさせていただきます」──。東芝の室町正志社長は8月の会見で、2015年3月期の業績予想を説明した後、こう切り出した。配布した資料には、これまで開示を拒んできた原子力事業の業績について売上高をグラフで掲載(図表1)。原子力発電は今後も必要とされ、将来性のある事業だと強調した。
長期にわたる組織的な利益操作が発覚した東芝。不正会計が行われていた主な舞台はパソコンや半導体などの事業だった。にもかかわらず、一連の騒動の渦中で、室町社長が自ら原子力事業についてあえて言及したのには理由がある。東芝の原子力事業における資産評価の妥当性をめぐって、投資家などの間で強い不信感が渦巻いているからだ。
6000億円投じて買収した米原子力大手
焦点となっているのは、同事業の中核で海外展開を担う米子会社、ウエスチングハウス(WH)。東芝は西田厚聰社長時代の06年、三菱重工業との争奪戦の末に、原子力分野の世界大手だったWHを手中に収めた。当時、「財産状況や業績から見て、WHの企業価値は高くても3000億円程度」といわれていたが、東芝が買収に投じた金額は倍の6000億円超に上った。
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