作家 北 康利氏に聞く 『佐治敬三と開高健 最強のふたり』を書いた

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辣腕経営者と無頼派小説家が、共に「心の闇」を抱えながら育んだ互いを畏友とする仲とは。評伝作家がたぐいまれなタッグを組み一時代を画した「合わせ鏡」を描く。

佐治敬三と開高健 最強のふたり
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最強の水準に至った二人のスケール感

──主人公のご両所とは浅からぬ因縁があるようですね。

開高健は高校(大阪府立天王寺高校)の先輩。37年前に爆笑に次ぐ爆笑の講演を学校で拝聴し、強烈な印象を抱いた。佐治敬三は同氏の菩提寺の住職が私の名付け親であったりして……。友人や知人の関係では多くの共通する知己がいた。

──その二人、何が「最強」なのですか。

人として求められるスケール感だ。それが最強の水準にまで行くには、実は陰に陽に並々ならぬ苦労や葛藤があった。

佐治は体が弱く、休学もしている。母親を早くに亡くす。二男で家業を継ぐとは思っていない。植物学者か化学者になろうかと。ところが、兄が亡くなる。戦時下となる中で、急に経営者になれと言われる。化学者としては懸命に松根油を集めたりしたが、まったく意味がなかった。いろいろ挫折を繰り返している。とどめは最初の妻が産後の肥立ちが悪く、終戦直後に亡くなったことだろう。神も仏もあるものかという心境になったようだ。

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