Geoff Dyer●英フィナンシャル・タイムズ記者。中国、米国、ブラジルなどの特派員を経て前北京支局長。ジャーナリズム活動でアジア出版協会アワードなど受賞多数。英ケンブリッジ大学、米ジョンズ・ホプキンス大学で学ぶ。現在、米ワシントン在住。
広範な視点から現場感覚で冷静に分析
評者 東洋英和女学院大学教授 中岡望
中国は世界の最大の不確定要因となっている。それだけに中国や米中関係に関する本はあふれるほど出版されている。だが、その多くは限られた専門分野について書かれており、中国問題の全容を十分に分析し切れているとはいえない。安全保障の専門家は軍事的脅威を強調し過ぎ、経済の専門家は中国経済を過大に評価する傾向がみられる。米中戦争は不可避だとする超悲観論から、中国は世界のステークホールダーとして積極的に貢献するようになるという超楽観論まで多種多様である。
その中で本書の特徴は、極めて多面的に中国を分析していることにある。著者は英フィナンシャル・タイムズの記者で、同紙の北京支局長を務めた人物である。論理的、文献的な分析に偏ることなく、ジャーナリストの鋭い現場感覚に基づいて安全保障問題からナショナリズムの問題、経済問題、さらに米中関係まで極めて広範な視点から中国を冷静に分析している。
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