いたみ・ひろゆき●東京理科大学大学院イノベーション研究科教授、一橋大学名誉教授。1945年生まれ。米カーネギー・メロン大学経営大学院博士課程修了。一橋大学大学院商学研究科教授を経る。著書に『経営戦略の論理』『マネジメント・コントロールの理論』など。
現場発の経営のあり方を具体的、多面的に示す
評者 福山大学経済学部教授 中沢孝夫
主に「生産技術」のもつ重要性に焦点をあて、現場発の経営のあり方を語った本である。技術者による、技術者のためのマーケティング、既存の技術(枯れた技術)の生かし方、グローバルニッチトップの獲得、感性に働きかけるデザイン、創意工夫の宝庫としての現場力、コンセプトの具体化。顧客を通して成功する組織統合、といった多岐にわたるテーマを、具体例によって丁寧に説明している。
たとえば、技術マーケティングとは、顧客の言いなりになるのではなく、複数の顧客との対話を通して、個々の顧客以上に専門知識を蓄積し、顧客にとってよりよい提案をすることである、と指摘する。たしかに大企業でも中小企業でもB2B(企業間取引)のメーカーの強い取引関係は技術的提案力を基礎としている。特に部品や素材、あるいは各種のデバイス類を手がけている場合は、自らの専門的技術によって、相手先(顧客)へ、よりよい生産方法を提案することによって関係を深めていく。
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