哲学者、京都市立芸術大学理事長・学長 鷲田清一氏に聞く 『しんがりの思想』を書いた

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右肩下がりの日本社会でわれわれはどう生き抜くべきか。臨床哲学の大家である著者は、浅薄なリーダーシップ論を一蹴し、市民の心の持ち方を説く。

 

日本は人口減少社会に入っています。そうしたとき、私自身若い人たちにたいへん申し訳なく思っています。

修復が不可能な原子力発電所の事故を起こしてしまい申し訳ない。国は1000兆円を超える借金がありながら、いまだ借金を増やしている。申し訳ない。経済が回らないと言って将来世代の所得の先食いをし、公共事業をやり続けている。申し訳ない。すべて申し訳ないとしか言いようがありません。

私はこれまでずっと臨床哲学を専門にやってきました。現場で知恵を発見する。そこでさまざま考えてきましたが、ここで一度、明治以降の市民社会のあり方、社会はどこに向かっていくのか考えたいと思いました。これが執筆の最大の理由です。

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──大阪大学の総長をされて考えられたこともあるようですね。

阪大で理事、総長として組織運営に携わってきました。その間、文部科学省から大学改革の実行プランが示されました。大学の自由度が上がったという声もありますが、大学の使命が瓦解するという危機感を持ちました。世の中には医療、介護、教育など市場原理を持ち込んではいけない領域があります。学問や芸術には中期計画や査定などはなじみません。

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