東京大学 准教授 池内 恵氏に聞く 『増補新版 イスラーム世界の論じ方』を書いた

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「イスラム世界との『対話』は、隔絶した存在との困難な交渉であるということを肝に銘じたうえで、それでもなお模索を試みるしかない」と言う。

増補新版 イスラーム世界の論じ方
増補新版 イスラーム世界の論じ方(中央公論新社/536ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。

──欧米とイスラム世界の人たちは深い関係にあるのですね。

欧米とイスラム世界は近いところで向き合っていて、脅威とあこがれの入り交じった乱反射する鏡像のような言説を生み出し、入り組んだ関係を結んでいる。それが世界に強い影響を与えている。われわれ日本人はらち外に置かれて、その関係が理解できていない。

われわれは中東の人を欧州の人とは違うと思っているが、アジアと比べると、中東は圧倒的に欧州に近い。欧州とほとんど一体といってもいい。近代に世界の中心は欧米になったが、中世はイスラム世界が中心だった。歴史上、この二つの地域が宗教や国際政治でグローバルな中心を回り持ちしてきた。中東はアジアをほとんど見ていない。

──見ていない?

われわれはアジア・太平洋を中心に生きているので、なんだか世界は日本を中心にあると思い込んでいるが、まったくそうではないことが中東に行ってみるとよくわかる。科学や宗教といった近代世界を形作っている基本のシステムは、中東と欧州という地中海沿岸で生まれ広がった。北米大陸も西欧の延長で、環地中海と環大西洋の世界が否応なくグローバル社会の中心なのだ。

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