安いニッポンで不動産買うリスクを知らなすぎる 住宅ローンはあっという間に債務超過になる

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この投資の常識が住宅ローンの世界では見事に無視されている。いや、これまではそんなリスクを考えなくてもよかったのである。日本社会において、企業は終身雇用制度を設け、年功序列が守られて、歳を取るにしたがって収入が上がっていくのが常識だったからだ。投資の世界でいえば、賃料収入は安定しているどころか、年数を経るにつれ順調に上がっていくことが約束されていたことになるのだ。

またバランスシートで考えても、都心部の不動産は値上がりを続けているのだから、資産の部はどんどん膨らんでいくのだったら、自己資金(自己資本)が薄くても債務超過になったりはしない、と考えられてきたのだ。

「安いニッポン」は「弱いニッポン」を意味する

ではこれからの日本もこの昭和平成脳の思考回路で生き続けていくことができるのだろうか。日本だけが世界の成長から取り残されつつある。安いニッポンは弱いニッポンを意味している。

そうした状況下で、今後日本人の賃金は伸びていくのだろうか。年功序列はすでに形骸化しているのが実態だ。それどころか雇用さえ保障されていないのではないだろうか。通貨安では、輸入に頼っている、生活に必要な食料品やモノの値段が今後大幅に上昇することを覚悟せざるをえない。

デベロッパーがなんとなく吹聴する「マンションが年収の10倍、11倍でも、金利は低いし、税金のペイバックがあるから大丈夫」は今後も保証された話なのだろうか。税金などの特典がどんなにあったとしてもローンの元金が減るわけでは決してないのである。

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ローン元金が気にならなくなるためには、今後も不動産価格が上昇を続けていくことが必須条件になる。安いニッポンを目指して海外投資マネーが日本の不動産を買い漁ることを続けるかもしれないが、彼らが買うエリアは日本のごく一部にすぎない。移民政策を採用しない日本で、人口減少が今後激しくなることは確定している。

東京一極集中がそろそろ薄れ始める中で、どんな期待をもって不動産価格が上昇し続けるとすればよいか、専門家である私から見ても、相当高度な投資判断が要求される問題だ。

流れや流行に乗っかって「私もひょっとしたら儲かるかも」などといった邪念で、思い切り背伸びをして家を買った人たちを迎えるのは、日本の今後の厳しい社会状況だ。

おそらく多くの人たちがこの日本が置かれた厳しい環境を認識するまでには、少し時間がかかるかもしれない。小さな穴が大きくなり、全員が認識するまでに時間がかかるからだ。そしてそれまでの間に多くの住宅ローン破綻が現実の問題として社会を賑わすことになるであろう。

昭和平成脳が完全に否定されるまで、この悲劇は続くことになる。

牧野 知弘 不動産事業プロデューサー

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まきの ともひろ / Tomohiro Makino

1959年生まれ。東京大学経済学部卒。ボストンコンサルティンググループなどを経て三井不動産に勤務。J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て独立。現在はオラガ総研代表取締役としてホテルなどの不動産プロデュース業を展開。また全国渡り鳥生活倶楽部株式会社を設立。代表取締役を兼務。著書に『不動産の未来』『負動産地獄』『空き家問題』『2030年の東京』(河合雅司氏との共著)など。

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