4月から「18歳成人」、約140年ぶりの変化にピンとこない学校の盲点 18歳ターゲットの悪質詐欺が横行するおそれも

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

私が学校で契約について教えるときは、例えば携帯電話の契約書を用意して、まずみんなで一緒に読んでいます。そして、気をつけるべき点を説明して「これを理解してサインするのが賢い消費者だよ」と伝えています。生徒たちが興味を持てるポジティブな教材や授業がもっと増えるといいなと思っています。

もう1つの方向性としては、学校のポリシーで生徒の行動を制限していくこともできます。

──それは、校則を変更して厳しく対処するということですか。

確かに学校の教育目的を達成し、安全配慮義務を履行するうえで必要なルールを校則で制定することは法的にも許容されていますが、18歳の生徒の行動を制限する目的で校則を作ることには無理があると思っています。

ただ、成年になっても生徒であることは変わりません。問題行動があればこれまでどおり校則を適用して処分できますし、アルバイトや結婚を機に学業不振になったケースなどに関しては、「学業に支障が出る」という理由で指導をしていくことはできます。そういう方向で説得、指導するアプローチは取れるでしょう。

そもそもやってはいけないことを教えると、かえって生徒がそれをやりたがるおそれもあります。実際そのように考え、保護者への発信に重点を置くことにした学校もあります。18歳成年について保護者会で話をしたり、お知らせプリントで伝えたり、入学時に「生徒心得」のようなものを配ったり、工夫されているようです。

──親はどう対応すればいいですか。

問題が起きたら話し合うのがいちばんですが、親子の関係が悪いとそうもいきません。そうなると、親はスポンサーとしてお金を出さないという形で子どもの行動を制限するしかないのかもしれません。

今はまだ学校も、保護者も、高校3年生になる生徒も、18歳成年の実感を持てていないのが現状だと感じます。三者それぞれが18歳成年の重みを受け止め、自主性と責任感を育んでいくことを願っています。

神内聡(じんない・あきら)
兵庫教育大学大学院学校経営コース准教授・弁護士。東京大学法学部卒業。東京大学大学院教育学研究科修了。専修教員免許(社会科)保有。日本で初めて弁護士資格を有する教員として私立中高一貫校に常勤教諭として勤務(現在は非常勤)しながら、現場の実情に通じた弁護士として各地の教育委員会のスクールロイヤーなどを担当。現在は教職大学院で理論と実務の懸け橋を意識した教育学研究にも従事。近著に『大人になるってどういうこと? みんなで考えよう18歳成人』(くもん出版)
(写真:神内氏提供)

(文:田中弘美、注記のない写真:Fast&Slow/PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事