第一線で活躍する社会人を「副業先生」として起用した学校の本音 高知高専と英理女子の事例に見る利点と課題

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「授業担当教員も実践的な最新技術を学べたと同時に、セキュリティーのような進展が速い分野では企業人の力が有効であることもわかりました。折に触れ、実際の業務や働き方の話もしていただき、学生のキャリア教育にもつながったと思います」

採用過程において、普段接することのない民間人材の職務経歴に触れたことで、学生のキャリア指導の幅が広がった。民間人材の採用ノウハウを学ぶ中で、組織づくりや人事戦略を考えるきっかけにもなったという。

副業先生のメリットは大きいものの、制度や採用の面で壁も

実はこうした動きは、高専だけではない。神奈川県横浜市の私立女子高校である英理女子学院高等学校の例も紹介しよう。2019年に「iグローバル部」を新設した同校は、STEAM教育など先進的な教育に力を入れているが、「グローバルプレゼンテーション」という授業に社会人を副業先生として起用した。その理由について、学校法人高木学園理事長の髙木暁子氏はこう説明する。

「世界で活躍するうえで重要なスキルの1つとなるのが、自分という人間を理解してもらうためのプレゼンテーション能力。実際に社会で仕事をする方々の知見は大いに参考になるはずですが、どうすれば本業のあるお忙しい社会人に来ていただけるのか。そう考えていた矢先にビズリーチの副業人材公募サービスを知り、活用することにしたのです」

こうした経緯で、19年の夏ごろからiグローバル部の1年生を対象にした課外講座として、副業先生による授業「グローバルプレゼンテーション」をスタート。20年度と21年度はコロナ禍を受け、総合的な探究の時間の一部としてオンラインで実施している。

ここを担う副業先生が、上原正太郎氏だ。47歳のMBAホルダーで、大手外資やスタートアップのテック企業にて、マーケティングや製品責任者として多くのサービス展開をリードしてきた。現在は日本マイクロソフトで、クラウドやAIを担当する。

上原 正太郎(うえはら・しょうたろう)
日本マイクロソフト在籍、小笠原流煎茶道教授。早稲田大学大学院工学修士、マギル大学デソーテルズ経営学部(MBA)修了
(写真:上原正太郎氏提供)

「将来的に大学教員への道などを考えていたこともあり、主にキャリア形成の観点から応募しました」と、上原氏。約150名の応募の中からたった1人選ばれた副業先生だが、社内向けトレーニング講師の経験はあるものの、高校生に教えるのは初めてだったという。授業では何を心がけているのか。

「インタラクティブに授業をしたいので、最初は信頼関係の構築に時間を割きました。プレゼンテーションはテクニックだけでなくマインドセットも併せて伝えています。また、ITビジネスの最前線で仕事をする臨場感も大切にしており、例えばサンフランシスコの出張直後に授業した際は、出張中の様子なども共有しました。ダイバーシティーの事例などを伝えることも意識していますが、逆に生徒さんたちの視点から学ぶことが多く、双方向によい刺激が生まれていると感じます」

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事