北朝鮮が企業の“独自戦略”促し始めた理由 「先端技術を持つ日本企業に来てほしい」

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 平壌市内を中心に相次いで建てられている住宅や娯楽施設。水力発電所の建設も進められており、北朝鮮の建設部門は活況を呈しているという。また、北朝鮮で四大重点部門とされる電力、石炭、交通運輸、金属化学工業などの拡充も進められているようだ。農業部門に引き続き、工業部門の現状について朝鮮社会科学院経済研究所・工業経営室長の朴成哲(パク・ソンチョル)氏に聞いた(インタビューは2014年9月25日)。
平壌市内。高層ビルも目立つようになってきた

――金正恩第1書記は、これまで軽工業の発展について何度も触れてきた。平壌市内を見る限り、軽工業品は商業施設などで十分供給されているようだが、現状はどうか。

軽工業品の国産化が進んでいる。また、原料の国産化も目標としており、このための開発・研究も活発に行われ、特に「2.8ビナロン連合企業所」が研究の中心になっている。ビナロンはわが国で発明された化学繊維で、2010年にビナロン生産が16年ぶりに再開されて以降、製造過程で約420の中間財が生産されている。ここには、ビナロンと塩化ビニールの2つの生産工程がある。

軽工業品の開発を進めることで、対外経済関係の発展を図るつもりだ。貿易の多様化・多角化で輸出を増やしたい。先端技術品とともに、食品加工や医薬など伝統的な産業製品の輸出にも力を入れていく予定だ。

重点を置くのは自然エネルギー

――原油事情はどうか。中国が北朝鮮向け原油の送出を止めているという話も出ている。

原油事情は厳しい。輸入はしているが節約に力を入れている。連合企業所の中には、石炭をガス化することで肥料を生産するところもある。

工業の方向性については、いくつかの主要項目がある。まず、金属・化学工業。これらはわが国の「経済強国」を支える力とされており、「主体(チュチェ)鉄」(コークスの代わりに無煙炭を使い、鉄鉱石、石灰石などと一緒に溶鉱炉に入れ、高純度の酸素を取り込み生産した鉄)などの生産と、生産設備の現代化が進められているところだ。

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