北朝鮮が企業の“独自戦略”促し始めた理由 「先端技術を持つ日本企業に来てほしい」

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朝鮮社会科学院経済研究所・工業経営室長の朴成哲(パク・ソンチョル)氏

――電力事情はどうか。

水力と火力の組み合わせ、水力と再生エネルギーとの組み合わせによる発電を優先している。北朝鮮は水力資源が豊富で、電力生産にとって環境もよい。ただ、今年は年初の水不足で電力生産に支障があったため、火力発電にも力を入れている。火力発電のもとになる石炭生産を重視し、特に採掘が有利な炭鉱への投資を集中させている。石炭の採掘関連技術向上も重視している。

――市内では太陽光パネルを設置している家屋も目に付く。再生エネルギー導入に力を入れているのか。

特に太陽熱・太陽光の利用に力を入れている。太陽熱については集熱器の技術を確立した。これを元に技術の標準化を図り、太陽光関連の生産・導入を進めていく。市内での太陽光電池やパネルの普及も、すでに進んでいる。

同時に風力発電にも力を入れており、黄海・日本海側に大型風力発電所を設立した。地熱についても、ヨンサン機械連合企業所がこの技術を開発し、より大容量の設備の開発・導入に力を入れている。

歓迎!日本企業の進出

――企業所や工場では「独立採算制」が導入されて収益力が上がり、労働者の勤労意欲も増し、これまでに考えられなかった賃金を得る労働者もいると聞いている。実際の経営はどうなっているのか。

まず、国家的に経済管理の改善に注力している。これは、わが国の内閣が統一的な指導と戦略的な管理を行うなど、内閣責任制・中心制を強化することでもある。これは、企業が党(朝鮮労働党)・政府の指導で円滑に経営できるようにするためだ。

独立採算制と言うが、少し誤解があるようだ。われわれは、「社会主義企業責任管理性」と呼んでいる。主な内容としては、企業ごとに自分たちで計画を立案し、実行・生産できること、また人民の需要が高いものを生産に反映できるようにすることを指している。

国家の計画の下に、各企業の実情に合わせて労働力を調整できることや、需要のあるものを開発し、そのための人材養成も自由にできるようにすることもある。さらに、合弁などの経営戦略、生産物や価格決定も、企業が行えることが柱になっている。要は、企業の責任制を高めるようにすることだ。

これらの施策を実行した結果、労働者への報酬として月数十万ウォンを支払うことができる企業も多く出てきた。

――北朝鮮からは、日本経済がどのように見えているか。

国交正常化がされていないことは非常に不幸なことだ。現在、北朝鮮には海外との合弁企業が800社ほどある。今後、日本との国交正常化へと向かう中で、日本企業の進出を増やしたい。日本企業には先端技術を持つ産業や農業科学関連、海洋、観光、省エネ、繊維、紡績など、すぐれた力を持つ企業が多くある。これら関連企業には、将来的にぜひわが国に来てほしい。
 

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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