任天堂が「ミリオン連発」を喜べない事情

手堅く止血作業を進めただけ

任天堂の持つキャラクターをどう生かしていくかも課題だ(ロイター/アフロ)

今回の決算に際し、第一弾の狙いとして挙げられたのが「睡眠と疲労の見える化」(岩田社長)だ。

任天堂はかねてより、QOL・健康関連事業で使う技術を「ノンウェアラブル」(身につける必要がない)としてきた。今回さらに「ノンコンタクト」(身体に触れる必要がない)「ノンオペレーティング」(操作する必要がない)「ノンウェイティング」(測定を待つ必要がない)「ノンインストレーション・エフォート」(設置の手間が不要)という、「5つのノン」を持つコンセプトでの、睡眠と疲労の計測を行う機器、という形を打ち出している。製品の細かな仕様は発表されていないが、米・ResMed社と提携し、枕元に置いて睡眠時の状況を把握するもの、だという。

競合との明確な差はない

ただしこうした方向性は、決して珍しいものではない。「接触」や「操作」があるとはいえ、睡眠チェックはスマホアプリや活動量計ですでに行われているものだ。枕元に置いて睡眠状態を計測する機器も、いくつかの企業が製品化している。日本でもオムロンが2012年から同様の製品を家庭向けに販売中だ。オムロンもResMed社との提携によって製品を開発しており、それらと任天堂の「QOL機器」の差はわからない。

「市場に似た技術を使った機器があるからヒットしない」というのは早計だ。スマートフォンだって、アップルがiPhoneをヒットさせる前から類似コンセプトによる類似の製品はあったが、操作性や機能、デザインの面で隔絶した完成度を実現した結果、今に至る成功を生み出した。任天堂としては、同社の持つエンターテインメント性や使い勝手に対するアプローチを生かすことで差別化ができる、と考えているのだろう。

しかし、まだ製品の姿が見えない以上、その成功が確実なものとは言い難い。また、エンターテインメント市場は「ブーム」を生み出せば爆発的な売り上げを期待できるが、同じ事を健康グッズでも期待できるのだろうか。単価を上げたりサービス利用料収入を軸にしたりするなら、大ヒットにつながらなくとも売り上げは上がるが、その時、任天堂のビジネス構造はさらに大きく変化せざるを得ない。

新技術を使った健康系デバイスは、ウェアラブルにしろそうでないにしろ、まだ「ガジェット好き」の層を越えるヒットを生み出せていない。そうでない機器は、高価だが手堅い「医療用ビジネス」の範疇に留まっている。

任天堂が「QOLで復活」するには、こうしたジレンマを吹き飛ばす、画期的な変化を市場に示す必要がある。

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