任天堂が「ミリオン連発」を喜べない事情 手堅く止血作業を進めただけ
新型もあくまで「リニューアル版」であり、完全な新型ゲーム機ほどのニーズは見込めない。もともと任天堂は年末に強い企業であり、新型とポケモンなどの相乗効果を狙っている。問題は、その効果がおそらく今年いっぱいのものであり、来年以降の国内でのリニューアル効果は期待しづらい、ということだ。
また、据え置き型ゲーム機のWiiUも厳しい。「マリオカート8」などの任天堂タイトルを中心にした需要はあるものの、今期販売台数は全世界で112万台と鈍く、売り上げへの貢献度は小さい。ハードウエアの逆ざやでの販売に係る損失を前期に計上済みであるため、今期は利益率が大幅に改善しているが、ライバルに押され販売数を劇的に伸ばす方策も見つかっていない。
ゲームプラットフォームでは、プラットフォーマーの販売するゲームタイトルと、他社(サードパーティー)の販売するゲームタイトルが両軸になって伸びる。任天堂は現在、サードパーディーからの支持が薄くなっているのが懸念材料だ。日本国内向けの3DS事業ではレベルファイブやカプコンのヒットタイトルもあるが、どちらも海外では大きなヒットにつながりにくい、という難点がある。ソニー・コンピュータエンタテインメントのPlayStation 4が、海外でのサードパーティーからの支持の厚さで盛り返しつつあることと比較した場合、正反対の状態といえる。
ゲームハードの売り上げを伸ばす決定的な策が見つからないことが、任天堂の足下のジレンマだ。ミリオンクラスのヒットを連発してもビジネスが伸びないのは、普及しきったハードウエアで展開しているがゆえに、ハードウエアの売り上げを牽引できないことが原因だ。
しかし、任天堂のソフトは強く、ファンの支持は厚い。それを生かし、息が長いビジネスができれば、基盤としてはより強いものになる。マリオやポケモンといった、広い世代に長く支持されるタイトルを出し続けることで、手堅いが任天堂以外には難しいビジネスを狙うことが可能だ。現行ハードウエアで戦う間は無理を狙わず、手堅く出血を抑える策に入った、と見て間違いない。
新規事業「QOL」成功の道筋はまだ見えず
ただし、手堅い「ファン中心のビジネス」では、業績を大きく伸ばすのも難しい。ソフトに新奇性が失われると、ファンも逃げていく。任天堂としても、新型ゲーム機などの新しいビジネスプラットフォームの準備が必要な状況だが、その中で、まったく新しい業態として準備中なのが「QOL事業」と呼ばれるものだ。その第一弾は健康関連である、とされてきた。ゲームのさらに外にある「楽しさ」を提供できる機器として、生活の質=クオリティ・オブ・ライフを提供しよう、という考え方だ。
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