なぜ今?「暗号技術」50年ぶり改訂のなるほどな訳 次世代標準が今年決定、日本企業も対応必須
ネット・ショッピングやキャッシュレス決済、銀行のATMなど、私たちの便利な日常生活を支える暗号技術が大きく変わろうとしている。
アメリカ国立標準技術研究所(NIST)は今年の早い時期に、現在の国際標準「RSA」などに代わる新たな暗号技術の方式を発表する見込みだ。同時に、2024年の規格化を目指した作業に入る。
この新方式はインターネットの国際標準化団体も早々に支持を表明するなど、事実上「暗号の次世代標準」となる。日本でも金融機関やIT関連をはじめ、さまざまな業界の企業が早晩対応を迫られることになるだろう。
現在のRSA暗号が発明されたのは1973年だ。それから約50年後となるいわば「歴史的な改訂」の理由は「量子コンピューターの登場」だ。
現在使われているRSA暗号はいずれ破られるリスク
RSA暗号は桁数の大きい自然数の素因数分解は時間がかかることを活用したもの。例えば素数101と211のかけ算の答えは21311だが、21311を素因数分解して101と211を割り出すのは、計算量が膨大になるため簡単ではない。桁数がもっと多くなれば、割り出すのがさらに難しくなるという特性を使っている。
現在使われているRSA暗号はトップクラスのスーパーコンピューター(スパコン)を使っても、ハッカーなど第三者が破る(解読する)のに1億年以上かかると見られている。つまり事実上、既存のコンピューターでは破ることのできない暗号である。
しかし本格的な量子コンピューターを使えばRSA暗号を容易に破れることが、1994年に「ショアのアルゴリズム」と呼ばれる数学理論によって証明された。
量子コンピューターとは、原子や電子などミクロ世界を説明する「量子力学」を計算理論に応用した夢の超高速計算機だ(『日本はまた後塵?米国「夢の超高速計算機」の驚異』参照)。現在のスパコンで計算すると何万~何億年もかかるような超難問を、量子コンピューターはわずか数分で解くことができると言われる。
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