新学習指導要領の「3観点」正しい評価3つの方法 「明確」にすべき点を整理すればメリット多し
「例として、体育のルールを守る姿勢を評価するとしましょう。その場合、ただ教員の印象だけで採点するのではなく、授業の後にレポートを書かせることがとても効果的です。教員にとっても評価の手がかりが増えることはもちろん、言葉によって整理することで、子ども本人の中でルールを守ることの意義がより深く理解されます。学びが確かなものになれば、態度や行動にも反映されてくるでしょう」
明確な言語化で整理する。田村氏が子どもに勧めるその手法は、3観点に向き合う教員へのアドバイスと同様だ。評価のための明確な言語化は、保護者への説明責任のためにも欠かせないと田村氏は話す。
「例えば先ほどお話ししたような、忘れ物で評価が下がっていた子ども。あるいは挙手の多さで評価されていた子ども。新たな3観点で評価されると、前者の評価が上がったり、後者が不満を抱いたりすることもあるかもしれません」
だがこれも「学びの本質を理解するチャンスになる」と、田村氏はあくまで前向きだ。
「誰かと比べたり、他者からの評価だけを求めたりするのは、生きる力につながる学びの姿勢ではありませんよね。期待される態度がクリアな言語で共有できれば、目指すべき姿は子どもにも保護者にもきちんと理解され、家庭と学校が同じ方向を向くことができると思います」
重要なのはやはりコミュニケーションだ。保護者含め、大人は子どもを見るとき、どうしても「自分の時代は」という過去に立ち返りがちだ。だが新しい学習指導要領と評価規準への正しい理解は、「自分の時代」から離れなければ得られない。
「保護者がいちばん知りたいのは、学校で自分の子どもがどんな様子なのかということです。保護者への説明が必要になった際には、実際のエピソードを交えて具体的な話ができるといいですね。子どもを継続的かつ多面的に観察できていれば、こうしたコミュニケーションも問題なくできるでしょう」
研修ももちろん有効だが、最も重要なのは日々の積み重ねだと語る田村氏。「年間約1000時間の授業をし、教員は子どもたちと誰よりも多くの時間を過ごしています。すでに必要な土台はあるので、自信を持っていただけたら」とエールを送る。明確にすべきことを整理し、ICTなどを活用すれば、さらなる簡便化や合理化もできるだろう。そうなってこそ教員の働き方も改善され、授業の質も上がるはずだ。
「今回の整備は、教員にとっても圧倒的成長のチャンス。評価を明確にすることで子どもの学びの姿を明らかにできれば、これまでと違う達成感が得られると思います」
田村氏は「新学習指導要領と学習評価の3観点は、誰にとってもポジティブなものになる」と太鼓判を押す。明確化すべきことを切り分けて整理し、評価規準はクリアに言語化する。さらに言語化した情報は、密なコミュニケーションで多方向に共有していく。これが田村氏の解く新体制の活用法だ。
(文:鈴木絢子、写真:梅谷秀司)
東洋経済education × ICT編集部
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