米国の金融危機対応はまだ終わっていない--ベスト経済書『バーナンキは正しかったか? FRBの真相』の著者、デイビッド・ウェッセル氏に聞く


--ヨーロッパが二番底に陥るリスクはどの程度ありますか。

二番底のリスクは増大しつつあるが、まだ大きなリスクにはなっていない。それよりもヨーロッパの低成長が長引く可能性を危惧する。政府資金が不足している今、金融危機や、中東戦争による原油価格暴騰などの問題が生じたら、実に危ない。

日本銀行は慎重になりすぎた

--バーナンキ議長の成功から日本銀行は何を学べますか。

バーナンキ議長は危機に際し、確信が持てないことでも思い切ってやってみなければならないことを示した。中央銀行の仕事には試行錯誤が伴う。保守的で慎重な態度をとるべきときもあれば、その反対の態度に出ねばならないときもある。日銀は、度胸が必要なときに慎重に過ぎたと思う。今、日本は国債残高が膨らみ、将来起こりうる暴落を回避する方策を見いだしかねている。そのために未知の領域に入り込んでいる。

--バーナンキ議長はFRBのバランスシートを拡大しすぎたため、米国はいずれ深刻なインフレに突入するだろうという見方があります。

FRBが多額の通貨供給をしたから、今後インフレが起こるだろうという単純な見方は間違いだと思う。また、政府が債務を解消するためにインフレを高進させるのではないかと心配する人もいるが、このような心配があるからこそ、トリシェECB総裁もバーナンキFRB議長も緊縮財政の必要性を訴えている。デフレのリスク、深刻な失業率など、問題が山積している今、2015年にハイパーインフレが起こるかもしれないという可能性を心配するのは、一種のぜいたくだと思う。

われわれが直面している困難は、火事が消し止められたかどうか判断できないことだ。消火済みなのに水をかけ続けているとしたら、利益よりも被害のほうが大きくなる。だから政策立案者は「二番底に陥ることがはっきりするまでは、二番底対策を打ち出すのは控えよう」と考え、慎重な態度をとり続けるだろう。
(聞き手・リチャード・カッツ =週刊東洋経済2010年8月14・21日合併特大号)

David Wessel●米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)の経済担当エディター。1975年ハバーフォード大卒。ボストン・グローブなどを経てWSJへ。ピュリツァー賞を2度共同受賞。1回目はボストンの人種差別問題、2回目は企業の不正行為に関するもので受賞。


『バーナンキは正しかったか? FRBの真相』
デイビッド・ウェッセル 著/藤井清美 訳


朝日新聞出版 2625円

  

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