8年連続増「SNSいじめ」が加速させる不登校 不登校支援の肝となるのは「保護者支援」だった

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文部科学省が2021年10月に発表した20年度の調査によれば、小・中学校における長期欠席者数は28万7747人、そのうち不登校の児童生徒数は19万6127人と8年連続で増えているという。そこにはどんな問題があり、どう向き合えばいいのか。今回は子どもの教育支援を行っている認定NPO法人カタリバ代表理事の今村久美さんに話を伺った。

社会の変化と、問われる学校のあり方

8年連続で増え続けている不登校。なぜ増え続けているのだろうか。NPOカタリバの代表理事である今村久美さんは次のように語る。

「原因はわかりません。ただ、学校での教え方や学び方が、社会の大きな変化や時代と合わなくなってきている中で、親子ともに『学校に引きずってでも連れて行くべき』と思わなくなったことは、ひとつの理由でしょう。これは、いい意味でもあると思います。病気を抱えていたり、家庭環境がさまざまだったり、昔から課題と言えるものはありました。しかし、今はそれらの課題に加えて、社会の変化と、学校の教え方にギャップが生まれてきている。そうした中で、子どもに苦しい思いをさせてまで学校に通わせなくてもいいのではないか。そんな思いを抱く親が増えている。不登校が増えているのは、教員の指導方法なども含め、これまでの学校のあり方が問われる時期に来ている表れだと考えています」

今、日本を含め、世界のありようが大きく変化している一方で、多くの公立の学校では現在も児童生徒全員に同じ内容を同じペースで教え続けている。だが、それが限界に来ているのではないか。もちろん一定の割合の子どもたちにとっては現状維持は有効かもしれない。だが、極端に成績がよい子やよくない子、集団行動が苦手な子どもなど、さまざまな特性を持った子どもたちの中には、現状の学校システムの中で苦しい思いをしていることも多い。そう今村さんは言う。

今後も増加が予想される不登校。早急な対策が必要だ、と語る今村氏
(写真:カタリバ提供)

「その意味では、不登校自体が問題ではないのです。義務教育の中で、何らかの理由で学校に行けない子どもたちがいる。それは事実です。学校を回避したとき、別の場所で学びを得られる機会がないこと、それが問題なのではないかと思います。例えばフリースクールに通おうと思っても、高額であることから、金銭的な理由で通うことができない。経済的な余裕がない家庭の子どもほど、泣いてでも学校に行かなければならない。それは、それ以外に学びの機会がないという現実を指し示していると思います」

「SNSいじめ」が加速させる不登校

そこにまた大きな問題として加わるのが、子どもたちのスマホ利用が広がったことだ。

「SNS上での仲間外れや、言葉による暴力などで苦しんでいる子どもは、学校での同調圧力を家庭にまで持ち帰らなければいけない事態となっています。これは大変憂慮すべきことです。昔なら、いじめられても家庭に帰れば、自分の時間を持つことができ、心の平安があった。しかし今はSNSで始終緊張を強いられている。心理的安全性が低くなっているといえるでしょう。さらに、SNSは閉じられたコミュニティーなので、親も気づいて助けてあげることが難しい。私のような大人でも、ネットやSNSにおける人の書き振りで傷つくことがあるのですから、語彙力が育っていない子ども同士のやりとりにおいてはなおさらです。スマホなどのデジタル機器の普及は、教育にもいい影響を及ぼしている一方、子どもたち同士のコミュニケーションを難しくしているという一面も理解しておく必要があります」

だが、スマホやSNSは今後もなくならないだろうし、いじめもなくならないだろう。それでは、そのような中で苦しい思いをしている子どもたちを、どう支援すればいいのか。

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