8年連続増「SNSいじめ」が加速させる不登校 不登校支援の肝となるのは「保護者支援」だった

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「学校が合わなければ、別の選択肢がある。そのようなセカンドオプションにアクセスしやすい環境をつくることが重要です。公的支援がある自治体もありますが、ほとんどは家庭の経済力によって、選択できる支援や機会が変わってしまっている。義務教育が無料であるならば、何らかの原因で、そこから外れざるをえない子どもたちの教育もまた、無料でアクセスできるべきでしょう。戦後から脈々と続いている教育システムは、すぐには変えられないかもしれませんが、だからこそオルタナティブな機会や場所を設けることが重要だと考えます」

では、不登校の児童生徒の学習機会はどのように確保されているのだろうか。現状は、フリースクールなどを活用するケースが多いという。しかし地域によっては、そもそもフリースクールがない所もある。また、あったとしても利用する場合には高額の授業料がかかり、経済力のある家庭の子どもしか活用することができない場合も多い。不登校特例校など公的支援もあるにはあるが、不登校特例校は、まだ全国に17校しかない。教育支援センターもすべての自治体が設置しているわけではなく、まだまだニーズには足りず、対応するにも限界があるのが実情だ。

「私たちのところにも不登校の子どもを抱えたひとり親世帯や、貧困状態にある方が、多く相談にいらっしゃいます。中には、『自分が仕事に行っている間に、子どもが飛び降りてしまうのではないか』など、自死が不安であるという悩みも聞きます。同時に、家庭では給食もないため、お昼ご飯もつくらなければいけない。親がつねに子どもの近くにいなければ不安と思う人も多く、その結果、親も不定期の仕事に就かざるをえなくなる。そして、貧困に転落してしまうというケースも見られる。また、不登校特例校も、フリースクールも、教育支援センターもないような地域では、すべて家庭で対応しなければならなくなり、学校以外の公的支援にアクセスできなくなります。このまま公的な支援が不足したままでは、学びの保証は家庭や自治体に依存し、八方ふさがりで孤立してしまう子どもが増えていくでしょう」

不登校支援の肝となるのは、「保護者支援」

こうした状況に対応すべく、今村さんが主宰するNPOカタリバでも、もともとあった拠点型の教育支援のほか、新たな取り組みを始めている。その1つが、不登校の児童生徒を支援するオンラインのサポートルーム「room-K」だ。そのメリットは、オンラインなら支援する側も支援される側も、地域や場所を問わず、利用できることにある。その内容は次のようなものだ。まずはオンラインでコーディネーターが子どもの支援計画を家庭や学校と調整。その後、Gather(ギャザー)というデジタルツールを使い、学校のような仮想空間の中で個別につくられた時間割の下、子どもたちは授業を受ける。支援スタッフは子どもの状況を見ながら、伴走していくという形をとる。ボランティアで支援するスタッフは、在宅ワーカーを中心にさまざまな経験や知見を持った人々が協力している。「room-K」では、ほかにも保護者支援、保護者同士の交流の場を設けているという。

対面ではなく、仮想空間で交流することで、不登校の子どもも安心して参加できるのだという
(写真:カタリバ提供)

「不登校支援の肝となるのは、実は保護者支援だと考えています。カタリバでは、2週間に1回、オンラインの保護者会を開催しているのですが、多くの保護者は不登校となった自分の子どもを目の前にして、戸惑い、混乱し、どうしていいのかわからない状態となっている。そのうえ、地域によっては問題のある親という扱いをされ、周囲から孤立し、保護者自身が引きこもってしまうケースも出てきています。私たちの取り組みでは、子どもが不登校であることよりも、保護者を支援し、子どもたちの学びを止めないためにどうすればいいのか。そこを一緒に考えていくことを大事にしています」

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