権力維持の道具となった「民主主義」という言葉 アメリカも中国も勝手に定義し叫んでいる

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では中国はどういう形態かというと、中国共産党のほかに中国共産党に緊密に協力する8つの政党があるとしている。しかし、中国には与党も野党もなく、共産党のリーダーシップのもとの複数政党制であるとしている。もちろん共産党以外の政党は形式的な存在にすぎず、あくまでも共産党一党支配のもとでの「民主主義」であることに変わりない。共産党一党支配も専制主義も否定せず、選挙による政権交代などはまったく想定していない。

こうした「中国流民主主義」は西側からの批判の対象になるが、白書は逆に欧米の民主主義を批判している。

「ある国が民主的かどうかは、その国の人々によって判断されるべきことで、少数の部外者によって判断されるべきではない」
「世界にはすべての国に適用できる政治システムはない。各国はそれぞれが自国の発展に適した民主主義の形態を選択する」
「中国は民主的モデルを輸出しようとはしない。そして、中国モデルを変更しようとする外圧を受け入れない」

民主主義は普遍的なものではないのだから国によってさまざまな形があって当然だ。したがって人権問題などを理由に外からとやかく注文をつけ、改革を求めることは内政干渉であり、これを拒否する、というわけである。

民主主義をうたう文書であるにもかかわらず、あくまでも党や国家が最優先される内容であり、民主主義にとって最も重要な個人の尊重、基本的人権が無視されておりとても納得できるものではない。

なぜ今、中国が「民主主義」を持ち出したのか

疑問なのはしばらく前まで民主主義などまったく気にしていなかった中国政府がなぜ、今、自分たちは民主主義を大事にしてきたと言い始めたかということだ。公表のタイミングはアメリカが世界各国に呼びかけた「民主主義サミット」開催の直前だったことからサミットの対抗策としての公表だという見方も出てくるが、白書はかなり入念に時間をかけて作成されているようにみえるため、サミットへの対抗策という単純な話ではなさそうだ。

このところ習近平主席は、鄧小平氏以来の改革開放路線の結果生じた貧富の格差などの社会問題に対処するために「共同富裕」を前面に打ち出し、さらに11月に発表した「第3の歴史決議」では、中国流の共産主義やマルクス・レーニン主義を強調するなど、イデオロギー的な色彩を強めている。

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