権力維持の道具となった「民主主義」という言葉 アメリカも中国も勝手に定義し叫んでいる

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バイデン大統領の「民主主義サミット」も各国首脳が一方的に発言しただけ(写真:Bloomberg)

2013年、習近平政権が大学教師らに対し、学生と議論してはならない7項目を伝えたことが広く報じられたことがある(「七不講」と言われた)。それは普遍的価値や報道の自由、市民の権利、党の歴史の誤りなどだった。

過去にこのような指示をしておきながら、あえて民主主義キャンペーンを開始した背景には、共産党一党支配の継続と自らの権力維持のために「民主主義」が利用できるという判断があるのだろうか。それともウイグルの人権問題などで高まる西側諸国からの批判への対抗措置なのか。引き続き注意深く見ていく必要がありそうだ。

ドゥテルテ大統領などが一方的に放言

そして中国との緊張を強めているアメリカのバイデン大統領も「民主主義」に力を入れている。大統領就任当初から打ち上げていた「民主主義サミット」が12月に開催されたが、予想通り内外からの評判は芳しくなかった(12月1日のコラム「アメリカ主催の民主主義サミットが不評な理由」参照)。サミットは共同声明のようなものはなく、結局、オンラインを使っての各国首脳らの一方的な発言に終わった。

政府批判を繰り返すメディアの弾圧など強権的な姿勢で知られるフィリピンのドゥテルテ大統領が「フィリピンは報道の自由、表現の自由が完全に享受されている」と発言するなど、独裁的な指導者がサミットに招かれ発言することで自らを正統化する場になるというお粗末な結果も生じた。

たまたまだろうがドゥテルテ大統領の弾圧に抵抗し続け今年のノーベル平和賞を受賞したネットメディア「ラップラー」のマリア・レッサ氏の授賞式が、このサミット期間中に行われており、「真実が伝わらなければ民主主義など存在しない」とスピーチしたのは、皮肉なことだった。

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