「ブラック企業」は、人種差別用語である 言葉の使い方に鈍感すぎる国内メディア

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人種のるつぼ、米国ではこうした偏見をなくすために、長年、Black(黒人)という表現よりも、Afro-American(アフリカ系アメリカ人)という表現がpolitically correct(公正で道徳的に正しい)とみなされて使われている。もちろん、米国の有名なラッパー、ジェイ・Z(妻は歌手ビヨンセ)のように、自らをBlackと呼ぶ人々も少なくない。しかし、米国では既にAfro-Americanという表現のほうが公の場では、より一般的になっている。

BlackとWhiteという言葉の意味について、考えさせられる良い映画がある。今の若い人にはあまり知られずに観られてないだろうが、1992年に米国で公開された映画『マルコムX』だ。1960年代の米国でキング牧師と並び、アフリカ系アメリカ人への人種差別撤廃運動の指導者として名を馳せた実在の人物、マルコムXの生涯を描いた映画だ。アカデミー主演男優賞受賞の名優、デンゼル・ワシントンが演じる名作。まだ鑑賞していない読者、特に若者にはレンタルビデオ屋で借りて観ていただきたい映画だ。

辞典に書かれていること

この映画の中で強烈なインパクトを放つシーンがある。マルコムXが刑務所の図書室の中で、同じ受刑者のベインズと、ウェブスターズ・カレッジエイト辞典を引き、それを読みながら、会話する場面だ。以下、その場面の会話を紹介する。

ベインズ: 黒 ― 光の欠如した状態。色彩のないこと。暗黒で、『未来は暗黒』のような形容に使われる。

マルコムX: 君は言葉に強いな。

ベインズ: (黒は)汚れていて、不潔、陰気、敵意。『暗黒の日(ブラックデー)』のような形容もある。極悪とか残酷さを連想させる言葉。恥、不名誉、過失等を暗示する。脅迫(ブラックメール)、除名(ブラックボール)、不良(ブラックガード)。

マルコムX: これはひどいな。

ベインズ: 次に白を見てみよう。ここを読んでくれ。

マルコムX: 白 ― 汚れのない雪の色。あらゆる色彩の原点。黒の反対。けがれのない状態。無垢(むく)、純粋、悪意のないことの象徴、無害、正直、公正、名誉。。。これを書いたのは白人だな?白人だろ?

ベインズ: 白人だよ。

今、日本でブラック企業という言葉を使って、記事を書いたりしているのはどのような人なのだろう。もし仮に自分がアフリカ系アメリカ人だったり、家族にアフリカ系アメリカ人がいたりすれば、ブラック企業という言葉を書いたり、使ったりすることに少しはためらうのではないか。

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