「こだま」が占う、東海道新幹線の未来像 東京-新大阪「グリーン9500円」の深謀遠慮

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「こだま」にフォーカスした格安商品は、「楽旅」が初めてではない。JR東海ツアーズが販売するツアー商品「ぷらっとこだまエコノミープラン」は、1990年の発売から24年を経た今も、高い人気を誇るロングセラー商品だ。ツアーではあるが割引きっぷに近い使い方ができ、毎週利用するヘビーユーザーもいる。

「こだま☆楽旅IC早特」は、「ぷらっとこだま」とよく似ているうえに、価格はより割安とあって、顧客を奪い合う懸念が考えられるが、エクスプレス会員専用という点が異なるので、現時点では特に影響はないという。

絶妙な価格設定、長距離で思い切った割引率

「こだま」は短距離の利用が中心。車内や発着ホームにも、どこかのんびりした空気が流れる

「『こだま☆楽旅IC早特』は、普段ビジネス利用が多いエクスプレス会員のお客様に、レジャーやお出かけでの利用を提案している面がある。価格も、4時間かかっても乗ってみたいと思っていただけるインパクトのある値段を独自に検討し、東京〜新大阪間で1万円を切る価格を設定した」(竹内氏)。

東京-新大阪間グリーン車利用で9500円と、インパクトのある価格が魅力の「楽旅」だが、料金表を詳細に見ると、その価格設定の巧みさが見えてくる。

乗車距離が300キロメートル以下の区間では、「楽旅」の値段は、通常のエクスプレス予約による普通車指定席の料金に一律300円を加算した額だ。例えば東京-静岡間なら、普通車指定席の5630円に対して「楽旅」は5930円。東京-豊橋間は普通車指定席の8220円に対して「楽旅」は8520円だ。

一方、300キロメートルを超えると急激に割引率が上がり、普通車指定席の料金よりも割安になる。元から「こだま」の利用率が高い短・中距離区間では「普通車プラス300円」という値段で利益を確保し、「のぞみ」や「ひかり」の利用が主流となる長距離区間では思い切った割引でインパクトを出す。50周年の話題作りというよりは、継続性を視野に入れた、十分計算された料金設定と言える。

では、開業50周年記念キャンペーンが終わる来年4月以降はどうなるのか。竹内氏は「今回は初めての試みであり、来年度以降については未定」としながらも、「こだま」が持つ「ゆとり」を生かした商品の継続に前向きだ。

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