みずほが「システム障害8連発」で失う3つの信頼 退職者が続出、就活中の学生からも人気がない
それでなくてもみずほは発足以降、数々の業務改善命令を受けてきた。
初めて受けた処分もシステム障害によるものだった。旧第一勧業銀行、旧富士銀行、旧日本興業銀行の3行が統合され、みずほ銀行が発足した初日、それぞれのシステムをつなぐのに失敗。ATMが使えなくなる、口座振り替えが250万件も遅れるといった大規模障害を引き起こした。2011年には、再び大規模なシステム障害が発生。東日本大震災の義援金受け付けで大量の振り込みが集中したことで、100万件を超える取引に遅れが生じた。
不祥事はシステムにとどまらない。2013年には暴力団への融資が発覚。この事件では金融庁に対して、「情報を知っていたのは担当役員までだった」と虚偽の報告を行い、一部業務停止命令まで出される事態となった。
こうした問題が起きるたびに、金融庁は行政処分を出してきたが、あくまでみずほの自主性を尊重する形で進めてきた。しかし、今回の処分は違う。みずほ自身の計画に対して目を光らせるということは、「箸の上げ下ろしまでチェックする」ということで、一歩踏み込んだといえる。
働き方改革進めても就活生が逃げていく
金融庁によって追い込まれるみずほ。支店の営業担当者が、「コロナ禍における顧客対応がまずかったことに加え、相次ぐシステム障害で将来の“飯の種”である新規口座開設が減少している」(支店の営業担当者)と明かすように、一部で顧客からの信頼も失い始めている。
みずほは人事制度改革を進める一方、「週休3日、4日制」の導入や、「兼業・副業」の解禁など、働き方の選択肢も増やしている。人事制度はほかのメガバンクも見直しに動いているが、働き方にまで踏み込んでいるのはみずほだけだ。
これは、「優秀な人材を集めるため」(みずほ幹部)。ところが、どうやら思惑通りに事は進んでいない。「就活の学生からの人気は低下の一途」(同)というのだ。さらに現場からは「そのせいか、入ってくる新人のレベルが毎年下がり続けている。採りたい人が採れていないのではないか」(30代行員)との声まで聞こえてくる。
近年、銀行の人気は芳しくない。将来の収益を心配するのはもちろんのこと、「コンサルティング会社や投資銀行に行けば、若いうちから稼げる」(新卒1年目の男性)と待遇面を意識した声もある。
コンサルが20代でも年収1000万円に到達できるのに対し、銀行の場合は30代まで給料の伸びが小さい。実際、みずほに入社した行員も「4年目で昇給するまでは手取りが少なく、ギリギリの生活だった」と口をそろえる。終身雇用の意識が薄く、転職もいとわない世代には、銀行の報酬体系は魅力的に映らないのだろう。
システム障害の影響も無視できない。みずほOBは「過去のシステム障害や暴力団融資事件の後は採用がかなり難しくなった。ほかのメガバンクに入れなかった人しか採れず、質の低下が顕著だった」と振り返り、「今後はさらに心配だ」と語る。
みずほを去っていく行員たちも増加している。「今年2月の障害から半年で、辞める人が格段に増えた。自分が知っているだけでも片手では収まらない」(若手行員)という。
金融庁、顧客、そして行員たちという3つの信頼を失うみずほの行く先は不透明といわざるを得ない。
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