従業員が告発「アマゾン創業者の宇宙会社」の恐怖 21人が性差別や恐怖政治が横行を訴えた

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前出の広報担当者は「ブルーオリジンは、いかなる差別やハラスメントも許容していない」とし、次のように述べた。「当社では、24時間365日対応の匿名ホットラインなど、従業員が声を上げられるようさまざまなルートを用意しており、問題行為の指摘があれば、そのすべてを速やかに調査している。安全性の実績には自信があり、ニューシェパードはこれまでに設計され製造されたものの中で最も安全な宇宙船だと確信している」。

ベゾス氏がブルーオリジンを設立したのは2000年。同社はイーロン・マスク氏のスペースXやリチャード・ブランソン氏のヴァージン・ギャラクティックと並んで、ロケットの打ち上げ費用を引き下げ、民間企業に対する宇宙空間の開放や宇宙旅行を目指す起業ムーブメントの一角を成している。

ブルーオリジンは7月にニューシェパードで初の有人宇宙飛行を成功させ、これまでで最高の実績を残した。

ところが、ベゾス氏らによるこの初の宇宙飛行を除くと、ブルーオリジンは今年、悪いニュースにまみれ続けている。春には、宇宙飛行士を再び月面に送り込む月面着陸船の製造契約をアメリカ航空宇宙局(NASA)から勝ち取ることができなかった。ブルーオリジンはこれを不服として、アメリカ会計検査院に異議を申し立てたが却下され、今度は連邦請求裁判所でNASAを相手取った訴訟を起こしている。

ニュースサイトの「ザ・ヴァージ」は29日、NASAの弁護団がブルーオリジンの訴えを一笑に付したと伝えた。

「賭けに出て失敗したことに気づいたブルーオリジンは、会計検査院の調達監査機能を利用して不備のあるブルーオリジン機の採用を不当に迫り、結果的にNASAに損害を与えようとしている」。同弁護団は5月26日付の内部報告にそう記した。

人手不足で安全に懸念、当局も調査に乗り出す

ライオネスで公開された告発状には、ブルーオリジンの不快で性差別的な企業文化に関する記述もある。「従業員と元従業員は非人間としか言いようのない扱いを受けており、地球上で最もリッチな男性に対して声を上げればどんな目に遭わされるかわからない、と恐怖におびえている」と告発状には記されている。

告発状はさらに、ブルーオリジンの幹部は今や年40回を超す猛烈な頻度でニューシェパードの飛行を推し進めようとしており、一部の飛行計画は人手不足から安全が損なわれる危険にさらされるようになっている、と指摘した。

一般人の安全が確実に確保されるようロケットの打ち上げを規制している連邦航空局は、安全に関するほかの問題と同様、告発状の情報について調査を進めているとする声明を発表した。

(執筆:Kenneth Chang記者)
(C)2021 The New York Times News Company

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