ホンダ「ドル箱不在」のエンジン屋が直面する課題 「脱エンジンの大胆目標」掲げた三部社長に聞く

拡大
縮小

――そこでクラリティなんですが……。

「クラリティは今回、工場がなくなっちゃうのでいったん生産終了としますけれど、本当は次まで間が空く予定じゃなかったんです。それがコロナの影響とか、技術的課題もあって開発が遅れて、かっこ悪いんだけどちょっと間が空いちゃって。実際、工場閉じるのは決まってましたし、間が空かないように当初は進めてたんですけども」

――予定よりは遅れているけれど、次期クラリティがあると。

「もちろん、出しますよ。ちゃんとやっていて、少し間が空いちゃうというだけで、やめるのかというと、やめません」

――やはりS660、オデッセイ等々、最近のホンダは4輪、やめる方向の話ばかりが出てきているので、クラリティも世間は当然そう感じている。

「4輪事業を縮小することはまったくない」

「進め方が今一歩でしたね。事業を縮小しようとしているわけじゃないので、やめるものもあれば、新しいものも同時に出てこなければいけないんですけど、ちょっと時間差ができちゃって。それで、そういう見え方になってしまっていますが、まったくそういうことはなくて、寄居工場もできて生産能力もちゃんとありますので、同じように出していきます。4輪事業を縮小するということはまったくないです」

――やめるものはやめて、一方で新しいものも投入していく。それを事業の拡大につなげていくには何が必要なんでしょうか。

「僕の中で明確なんですけど、うちの4輪事業がダメなのは儲かるクルマを持っていないというところで。体質が悪いとか言われてますけどそんなことはなくて、生産の稼働率だって、ホンダの4輪事業は実は業界でもトップレベルですから。欠けているのはドル箱のクルマを持っていないという、そこだけなんですよ」

――それこそアライアンスを組むGMは、ピックアップが非常に高い利益率で、おかげでEVや自動運転などに積極投資できているという面もありますね。

「利益の出る車というのは、それイコール、商品魅力があるということです。そのあたりはいろいろ手を打ちつつあるので、今はなかなかお話しできないですけれども、このままでいいわけがないって思っていますので、変えていきますよ」

前任の八郷隆弘・前社長はF1撤退を決め、イギリスや狭山などの工場を閉鎖するなど、特に任期後半は広げすぎたビジネスを整理する方向が目立った。もちろん、三部社長も当時、副社長であったのだし、脱エンジンの方向性もその時には決まっていたはずだ。
その後を継ぐ三部社長に求められるのは、まずは改めてホンダはどこに向かっていくのか、どんな価値をユーザーに提供していくかを明確に示すことだろう。特に最後に触れられた、商品ラインナップの再構築、それこそドル箱となるような売れるクルマの開発は急務と言っていい。パワートレインは何でもいい。“らしい”クルマの登場こそが、ホンダには待たれている。
島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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