ホンダ「ドル箱不在」のエンジン屋が直面する課題 「脱エンジンの大胆目標」掲げた三部社長に聞く

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ホンダは2009年にパナソニックに対するもう一方の雄とも言うべきGSユアサとの合弁でリチウムイオン電池の開発、製造、販売を行なうブルーエナジーを設立している。しかしながら、たとえば前出のホンダeではパナソニック製のバッテリーを使っているし、またブルーエナジーもトヨタ自動車「ハリアー」にバッテリーを供給するなど、結びつきがやや希薄、曖昧に見える部分は否めなかった。しかしながら“別ルート”は、やはりここを軸として考えているに違いない。

「材料は、日本のメーカーが圧倒的に強いので、バッテリー産業を、日本のこれからの産業はどうするかという辺りでいうと、日本にいきなりアメリカのGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)みたいなものができるわけじゃないですし、液晶や半導体など、世界に先行していても数年後には皆もってかれちゃうみたいなことを何回繰り返すんだというところもあるので。そこはちょっと慎重になおかつ変な失敗をしないように進めていきたいですね。キーとなるのは全固体電池かもしれないので、その辺りも視野に入れながら」

燃料電池車を武器にしない手はない

――燃料電池はいかがですか? クラリティ フューエルセルの生産終了が発表されて、ホンダは手を引いてしまうのではという声もありますが。

「うちが開発を始めて30年以上も経つので、それを武器にしない手はないと思っています。電動化の時代に、位置づけとしては小さいモビリティはバッテリーを使ったEVなのかなと思いますが、ある程度大きくなってくるとFCVのほうがいい。たとえば大型トラックは間違いなく電池では無理で、FCVになると思っていて、いすゞさんともずっとスタディしていて、ちょうど1台目のトラックができてくるところです。年内はテストコースで、来年からは公道を走らせる計画になっています」

――ホンダの4輪にも大型のセダンやSUVがありますが、量は多くない。そうなると他社と組んでやっていく方向が強化されるのでしょうか。

「クルマだけじゃなく産業用ディーゼルエンジンが活躍している部分、あれが燃料電池に置き換わったらいいと思っていて、モビリティの範囲を超えて燃料電池の可能性を探っているところです。そういった意味でいうと燃料電池はB to Cもやりますけど、B to Bのビジネスのほうが可能性としては少し大きいのかな。トラックだけじゃなく建設機械とかね、定置型の発電機、あとはデータセンターの非常用電源みたいに(可能性はある)」

――そうした部分で普及していけば、4輪にもいいかたちで跳ね返ってきそうです。

「B to Bのビジネスで数が増えればコストが下がりますし、それはまたクルマに返ってきますね。やはり今、FCVはコストが高すぎるんです。それは技術がスゴいからというより数が少ないから高い。エンジン車と同じような機能の部品でも、数が少ないと簡単に10倍とかのコストになっちゃう。そんなこともあって、数を増やしながらできればモビリティにも使っていきたいと思っています」

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