20年経った今語られる「捜索救助犬たちの9.11」 生存者の捜索だけでなく、人々を癒やした存在
しかし、より大きな問題は、何時間も捜索したのちに、1人も人を見つけることができないというもどかしさだったという。犬たちが落胆して、やる気を削がれてしまったときには、調教師たちは「疑似発見」を演出して犬に達成感を与えてあげる必要があった。
「訓練の時には、何時間も捜索して1人も人を見つけられないということはないのです」とオットー獣医師は最近の電話による取材で話してくれた。「勝利を収めることができるんだということを、時々は犬たちに思い出させる必要があるのです」。
救急隊や消防士に癒やしを与えたブリトニー
「Bretagne(ブリトニーと読む)」というゴールデンレトリバーは当時2歳で、テロが起こった翌週に現場に到着して、10日間生存者の捜索にあたった。ブリトニーはジャヴィッツセンターで調教師のデニス・コルリス氏とともに犬舎で眠った。コルリス氏はテキサス州から来た電気技師で、FEMA国立都市捜索救助制度の28あるチームの1つであるテキサス・タスクフォース1とともにニューヨークにやってきた。
56歳のコルリス氏によると、2016年に亡くなったブリトニーは、FEMAに雇われてグラウンドゼロで活動した、知られている中で最後の存命の救助犬だったという。ブリトニーは、近づいてきて頭をなでてくれる救急隊員や消防士たちに安らぎをもたらした。そのうち彼らはコルリス氏に心を開いて、捜索している行方不明の友人や同僚についての個人的な話もしてくれた。
「ある男性が近づいてきて、ブリトニーをなでながら『実は、私は犬があまり好きではないんだ』と言いました」と、彼女は話す。
「その男の人は膝をつきながらブリトニーをなでているので、驚きました。『そうなんですか?』と私は言いました。『ええ、でも私の親友は犬が大好きで、ゴールデンレトリバーを飼っています。その彼はあそこのどこかにいるはずなんですよ』と言って、瓦礫の山を指さしました。ブリトニーは、その男性と彼の行方不明の友達を 結びつける存在だったのです」
ミュージアム・オブ・ザ・ドッグの新しく開催される展示では、このエピソードが呼び起こす感情をとらえたいのだとフォーセル氏は言う。
「捜索救助犬たちは瓦礫の山から人を救うことはありませんでした」と彼は言う。「でも、捜索にあたった人間たちをいくぶん救ったのかもしれません」。
(執筆:Sarah Bahr)
(C)The New York Times News Services
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