勉強以外で利用も「小中1人1台PC」トラブルの実態 GIGAスクール構想、保護者と教員の経験を調査

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公立の小中学校に1人1台端末が配備され、多くの学校で活用が始まっている。うまく利用できている学校が増える中、「子どもたちが休み時間に授業とは関係のないYouTubeを見ている」「対策をすり抜けてゲームをしている子がいた。後手後手のいたちごっこになっている」といった声も聞こえてくるようになった。端末に慣れてきた証拠だが、子どもたちと向き合っている教員や保護者の心配は絶えない。そんなGIGAスクールで配備された1人1台端末のトラブルに関する調査結果を紹介する。

端末がまだ届いていない?

コロナ禍でGIGAスクール構想が前倒しされ、全国の小中学校で1人に1台の端末が配備されてから約半年が経過した。うまく使えている学校も増えているが、家庭や学校でのトラブルも増えている。

では、どのような問題が起きているのか。トレンドマイクロは2021年6月、小学校1年生から中学校3年生までの子どもを持つ保護者342人と、国公私立の小・中学校教員331人を対象にした「GIGAスクールにおけるセキュリティ実態調査」を行い、673人から回答を得た。

この調査の結果でまず意外だったのは、端末の配備状況だ。文部科学省の「GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備(端末)の進捗状況について(確定値)」では、全自治体等のうち、96.5 %に当たる1748自治体等が2020年度内に納品を完了する見込みとされている。

ところがトレンドマイクロの調査では、学校から端末を受け取ったかという問いに対し、保護者の58.8%、実に6割近くが「受け取っていない」、また教員も29.3%が「受け取っていない」と回答している。文科省の数値とは、大きくかけ離れた数字だ。

保護者に端末を受け取ったことを伝えていない子どもがいる可能性はあるが、教員が自分の児童生徒に端末を渡したかどうかはさすがに把握しているはずである。そのため自治体には端末が納品されていても、その先の学校や子どもにはまだ届いていない状況が考えられる。

約半数の子どもが端末を家に持ち帰っていない

学校から端末を受け取ったと回答した保護者141人、教員234人には、その端末を子ども(児童生徒)がどれくらいの頻度で自宅に持ち帰っているかも聞いている。

これに対し、保護者は「毎日(1週間に5回)持ち帰ってくる」が22.7%、「1週間に3~4回」が1.4%。そのほか「1カ月に1回以下」の頻度でしか持ち帰らないという回答なども含めて、持ち帰っている子どもの合計は58.2%であった。残りの41.8%の保護者は「一度も持ち帰っていない」と答えている。

一方、教員では「毎日(1週間に5回)」が11.5%、「1週間に3~4回」が5.6%で、「1カ月に1回以下」の頻度でしか持ち帰っていないという回答なども含めて、持ち帰っている子どもの合計は42.3%である。「一度も持ち帰っていない」は57.7%で、この回答が最も多くなっている。

保護者と教員の回答には若干の乖離があるが、少なくとも半数ほどの子どもは端末をまったく持ち帰っていないことがわかる。

文科省は積極的に持ち帰ることを推奨しているが、中には持ち帰ることを禁止しているという学校もある。自宅への持ち帰りを認める学校は徐々に増えているようだが、家庭に通信環境が整っていない場合はどうするのか、また端末をどう使わせるのか、トラブルが起きないようどう指導すべきかなど、学校現場にも準備期間が必要であり、持ち帰りが日常になるにはまだまだ時間がかかりそうだ。

端末の持ち帰りをしていない学校が多いのは、自宅での利用に対する不安が大きな要因となっていると考えられる。中でも、端末を使うことで子どもが犯罪やトラブルに巻き込まれることを心配する声が多いが、この調査でも保護者の69.0%、教員の84.0%がそうしたトラブルを心配していることが明らかになった。

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