ここから3年が勝負、1人1台端末「日常化」のコツ カギは学校のコミュニケーションのデジタル化
例えば、責任を持つ対象は、家族や友達をはじめとする身の回りの人々に限らず、自分自身であり、世界であると説きます。自分自身に責任を果たす、というのは面白い発想ですが、自らの健康や評判を良好に保つことは大切ですよね。併せて、ネットでは大人も子どもも区別なく、社会的に大きな影響を与える機会があることを学び、行動する前によく考えることを促します。内向きなことと同時に、他者とのつながりや社会参加のきっかけを学んでいく訳です」
こうしてICTの日常化、デジタル・シティズンシップ教育、保護者の理解と対話へとステージが進んだら、次の段階はICT活用をより活性化させるための「出口」をつくることがカギになるという。
「ICTと子どもの生活や活動を学校側でもうまくつなげる工夫が必要です。例えば、クラウドを活用して夏休みの自由研究をデジタルで受け付け、オンラインの発表会を行えば、親や祖父母など外部の人も閲覧できます。高学年なら、デジタル組み版で学校新聞を作ったり、探究学習を動画レポートにまとめたりして、関係者からコメントをもらえるようにすれば、動機づけも高まることでしょう。
こうして、手元で情報を生み出す段階から出口までを意識できるようになれば、子どもたちはICTをさまざまな場面に応用し始めるはず。『子どもたちが部活や生徒会などで、何やら面白い使い方をし始めている』という話題が先生方の間で持ち上がったら、それは教育のICT活用が本物になった証拠です」
当然のことながら、こうした「出口」の方向性を指し示すのは、教育長や校長の役目になる。GIGAスクール構想を推進するキーパーソンがビジョンを示し、今こそリーダーシップを発揮するときだ。

国際大学グローバル・コミュニケーション・センター 准教授
横浜国立大学大学院教育学研究科修了、東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程中退、1995年から国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)に勤務、2004年より現職。専門は学校教育心理学・教育工学・学校経営。長年にわたり教育と情報化のテーマに取り組む。全日本小学校ホームページ大賞(J-KIDS大賞)企画運営(03~13)、文部科学省・学校の第三者評価の評価手法等に関する調査研究「学校からの情報提供の充実等に関する調査研究」(08)、文部科学省・緊急スクールカウンセラー等派遣事業・東日本大震災被災地のための学校広報支援「ともしびプロジェクト」(11~)などのプロジェクトに取り組む。共著に『デジタル・シティズンシップ コンピュータ1人1台時代の善き使い手をめざす学び』(大月書店)がある
(注記のない写真はすべて豊福氏提供)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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