知事選圧勝、川勝氏が示すリニア問題解決の糸口 知事が待望する葛西氏との会見は逆に好機だ
22日の会見で、“川勝劇場”が最高潮に達したのは、葛西敬之・名誉会長の名前を連呼したときだ。「JR東海の意思決定者である葛西さんと話さなければらちが明かない」と宣言、葛西氏との会談を提案した。
川勝氏はJR東海発足の立役者である葛西氏とは、25年以上にわたるつきあいがあり、“ツーカー”であると述べた上で、リニア計画の「休止」を葛西氏に求めるのだという。ただ、葛西氏は昨年6月、80歳を前に取締役から外れている。
国とJR東海は静岡県をもっと攻めるべきだった
言いたい放題の川勝発言の源は、河川法に基づく河川占用の許可権限にある。
1級河川の大井川約168kmのうち、駿河湾から上流約20kmを国が管理、そこからリニアトンネル建設予定地を含む源流部まで約150km区間を県が管理する。工事に当たって、河川内で工作物を新設する場合など、JR東海は管理者の許可を得なければならない。
リニアトンネルは南アルプスの地下約400mの大深度を貫通するが、河川占用の許可が必要。川勝氏は、トンネル計画地から100km以上も離れた下流域の「利水上の支障」を盾に許可しない方針を崩さない。この許可を得られない限り、JR東海は工事に着手できないのだ。
2019年9月、菅義偉官房長官(当時)はリニア静岡問題に政府が関与することを表明、10月に国交省の事務方トップ、藤田耕三事務次官(当時)が静岡県庁で川勝氏と会談した。その後、事務交渉のすったもんだの末、国は昨年4月、ようやく水資源工学や地下水の専門家らによる有識者会議を設けた。
現在まで11回の会議が開かれているが、川勝氏は会議終了の度に、議論の中身ではなく、座長コメントや会議の全面公開を問題にして、国への批判を繰り返している。これでは、いくら有識者会議が懸案事項の解決を図ったとしても、川勝氏が河川法の許可を出すはずもない。
いまから考えれば、川勝氏が尻尾を出した機会に乗じて、国、JR東海が徹底的に攻めれば、事態は変わっていたかもしれない。
昨年6月、金子慎JR東海社長が静岡県庁を訪ね、川勝氏にリニア準備工事の再開を求めたときのことである。
会談の終盤になって、金子氏は「ヤード工事(準備工事)は水の問題と関係ない。それ以前の問題だと理解してもらいたい」と述べると、川勝氏は「県自然環境保護条例では5ヘクタール以上であれば、協定を結ぶ。県の権限はこれだけである」と応じた。直後の囲み取材でも、川勝氏は「ヤード工事は明確にトンネル工事ではない。5ヘクタール以上の開発であれば、条例に基づく協定を結べばよい。活動拠点を整備するのであればそれでよろしい」などと明言した。つまり、川勝氏は河川法の許可権限が及ばない準備工事を認めたのである。JR東海はこの機会を捉えて、準備工事を始める言質を取るべきだった。
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