揺らぐタイの“国体” 

反政府行動制圧も、政情不安は深刻化

また、「タイ政府による外資優遇策に変わりはなく、日本企業進出の歴史も長くすそ野産業も発達しているタイを超えるような国はない」とJETROアジア大洋州課の若松勇課長はタイ経済の長所を指摘する。今回のような騒乱が全国にまで波及、かつ長期間にわたることがなければ、経済的影響はそれほど深刻ではなさそうだ。

実際に、抗議活動が本格化する前から、2010年度は世界同時不況の回復から脱し、09年のマイナス成長からプラス成長の予測がなされていた。「タイは輸出依存度も高く、海外での需要増に対応した経済活動が回復する基調は変わらない」(若松課長)。

10年度の経済成長は4.5%を予測しているが、懸念材料はGDPの約6%を占める観光業への悪影響だ。旅行業界では、3月からの反政府行動で100億バーツ(1バーツ約2.9円)の収入を失ったとも言われている。バンコク市内のホテル稼働率も8、9割から3割程度に落ち込んでいるとの報道もある。コーン財務相も0.3~0.5%の落ち込みは避けられないと発言していた。

今後の「国体」に不安も

今回の騒乱がもたらした悪影響は、経済よりも政治的に深刻なのかもしれない。

2006年のクーデターで、選挙で選ばれたタクシン元首相派の政府が転覆。その後、タクシン支持派と反支持派との対立が続いてきたタイ。この構図は、年初まで続いてきた。

ところが、今回の事態がこの構図を崩してしまった。政治的対立がきっかけであったものの、混乱が高まるなかでタイ社会にいまだ根深い貧困や社会的格差などに不満を持つ者まで合流、タイ社会全体の対立に発展したためだ。

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