異色理事長「あえて女子校」STEAM教育に挑む理由 英理女子「ジェンダーバイアス」ない環境で学ぶ

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創立者の髙木君(たかぎ・きみ)先生と生徒たち

その意味で、STEAM教育を行う「iグローバル部」は同校の目玉となっている。実際、国内で理系女子に特化した学校は珍しく、まさに「リケジョ」養成の登竜門となりつつある。カリキュラムなどについても、コンピューターサイエンスの権威である東大名誉教授の坂村健氏が教育プログラムの監修を行っており、その充実度は折り紙付きだ。

「まだスタートして3年ですが、プログラミング教育などをはじめ、興味のある子は放課後でも自主的に集まってどんどん研究しています。SDGsなど社会的課題を解決するテクノロジーに興味を持つ生徒も少なくなく、実際、実験室にこもって廃棄されたお米からバイオマスプラスチックを自分で作ってしまった生徒もいます。女性の視点やアプローチを基に、女性が生き生きとテクノロジーを学べる場が今、できつつあると感じています」

そう語る髙木氏は日本の教育の現状について、平均的な学力を身に付けるには最適だが、その一方で、自分からチャレンジする力、あるいは大きなビジョンを描く力、起業家精神といったものを育むための教育は不足しているのではないかと指摘する。

「確かに教育は脈々と受け継がれてきた歴史があり、すぐに変われるものではありません。しかもICT教育が本格化する中で、現場の先生たちの負担も大きくなっており、社会全体でバックアップしていく必要もあります。ただ一方で、そもそも学校という場は社会との接点が少なく、先生と親以外に生徒が出会える社会人はほとんどいません。とくに高校は自分の将来の進路を決める大事な場所でもあります。そこで社会との接点がないままに意思決定するのはどうなのか。これから先生たちもファシリテーターとして役割が求められる中、学校全体で社会との接点をつくっていくことが大切だと思ったのです」

「企業コラボ」「副業先生」で社会の仕組みを学ぶ

森永乳業とのコラボレーション企画。企業とコラボレーションをすることで、社会の仕組みや、あり方を早くから学ぶことができるという

こうした考えのもとに現在取り組んでいるのが、課外授業での企業とのコラボレーションだ。すでに地元食品メーカーの崎陽軒、大手乳業メーカーの森永乳業や文具メーカーのキングジムなど大手企業と組んで共同で商品開発に取り組むなど、成果を上げている。生徒にとっては自分が考えたことが最終的に商品という形になるため、楽しくやる気になる一方で、企業側も若年層のニーズをつかめるため互いのメリットを生かした取り組みとなっている。

また、社会で活躍する人材を教員として起用する「副業先生」についても、「グローバルプレゼンテーション」といった授業などを定期的に開いている。社会人教員の公募では人材紹介大手のビズリーチを利用しているが、昨今の副業ブームもあり、優秀な人材から少数の採用枠に対し想定以上の多数の応募があったという。

「学校の先生と、日々海外とやり取りしているビジネスパーソンのプレゼンテーションには少なからず違いがあります。これまで学校の先生では教えきれなかったところを含めて、現役バリバリのビジネスパーソンに教わることは生徒にとって大きな刺激となっています。実際、自分のロールモデルを見つけたり、社会の規律を学んだりするきっかけとなっているのです」

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