百年の紆余曲折が生んだ4.8リットル「超節水」トイレ《戦うNo.1技術》
コンパクトトイレ=サティスは消費者心理を見事にとらえた。年間5万台の販売目標は超過達成。それに対し、“遺物”となったネオレストの存在感は一気に薄まった。市場の評価は「技術力で先行するINAX、後追いのTOTO」に一変する。
TOTO社内に危機感が募った。当時、国内営業を担当していた張本邦雄社長は振り返る。
「作る側にしてみれば、いくらいい商品を作っても営業が安売りする。営業にしてみれば、世間はドンドン値下がりしているんだから仕方がない、という水掛け論が続いた」
このままではいけない。TOTOは10年ぶりにネオレストの刷新に着手する。新型ネオレストを市場に投入したのは、サティスに遅れること1年3カ月。このとき搭載した新技術が、TOTOにとっての大きなターニングポイントとなった。
実は、さかのぼって99年、TOTOは「セフィオンテクト」という独自の防汚技術を実用化していた。これは着色のための釉薬の上に、もう1層、細かいナノレベルのガラス層を吹き付けることで汚れをつきにくくする技術だ。
ただ、従来の便器は、便器のフチにある30カ所の穴から洗浄水を流す構造だった。これだとフチから底に落ちるエネルギーのみで、便器を力強く洗うことは困難。加えて、フチに残った水がまれにこぼれ落ちて、水垢の原因にもなっていた。せっかくの独自技術も十分に性能を発揮できていなかったのだ。
トルネードのコア技術 新型ネオレストに結実
「それだったら、フチをなくしてしまえ」。初代からネオレストの開発に携わっていた林良祐氏(現TOTOウォシュレットテクノ社長)は、そう考えた。では、水はどのように流すのがベストか--。
林氏は知恵を巡らせた。「水が落ちる位置エネルギーをそのまま運動エネルギーに変えて、ぐるぐるとボウル部分で回してやればいい」。